国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ

「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」

日本国憲法前文の一説です。

今、香港では、市民を「隷従」に追い込もうとする中国の「専制」が、圧力を増しています。アメリカでは、黒人差別にblack lives matterと声を挙げた市民を、大統領の「偏狭」な人種差別的振る舞いで軍隊を動員してまで、 自由の象徴たるデモを「圧迫」しようとしています。

世界を2分しようという2大国の野蛮ともいえる振る舞いに、前掲の前文を掲げる憲法を戴く日本国は、どのように臨むのか?

香港の事態に対しては、一部国会議員の間で署名活動に参加したりするなどの動きはあるものの、国を代表する政府や、国民を代表する国会から正式なメッセージが出される気配はありません。もちろん、外交的な手段を通じて、事態の収拾や仲介などに努めているという話も耳にしません。

このような事態に、明確なメッセージを出すことのできない国が、「国際社会において、名誉ある地位を占め」ることは、努々あり得ることではないでしょう。

憲法の前文は、国家の理念です。自国が掲げる理念に基づいた行動をとることができないとなれば、掲げている理念に意味はなくなってします。

そもそも現政権は、憲法の掲げる理念を実現したくないから「憲法改正」に勤しんでいるのではないかと勘繰りたくもなります。

となれば、香港で起こっていることも、アメリカで起こっていることも、対岸の火事ではありません。自国の政府による「専制と隷従」「圧迫と偏狭」が、私たちに身に降りかかってもおかしくないのです。

実際、60年前、安保闘争の最中、当時の岸信介首相は、デモ隊鎮圧のために自衛隊を治安出動させようとしました。その際は、当時の赤城宗徳防衛庁長官が職を賭して反対し、実際の出動には至りませんでしたが、万が一、あの時自衛隊が出動していたら、国を守る自衛隊が国民に銃口を向けることになっていたのです。それを躊躇なく発想したのは岸信介氏は、安倍首相の尊敬してやまない祖父であることは、皆さんご存知のところです。

手遅れになる前に。